2020年1月8日水曜日

通帳のOCRについて

 弁護士が取り扱う業務の類型の中に,成年後見事件というものがあります。
 
 これは,ざっくりといえば,判断能力が低下してしまった方のために,身上監護や契約などの法的事務や財産管理等を行うというものです。

 他の人の財産を管理することになる関係上,財産管理は当然適正に行うことが求められ,またその管理が適正であることが説明できる状態を維持することが期待されます。
 そういうわけで,成年後見人に選任された弁護士は,なるべく現金でのお金の移動のような,お金の動きが見えづらい取引は避け,極力預金通帳にお金の動きが記載されるようにするのが一般です。
 このようにすれば,定期的に行う裁判所への報告の際も,通帳上に記載されているお金の動きについて説明すればいいということになります。

 この「通帳に記載されているお金の動きの説明」ですが,厳密に行うのはそれなりに大変です。
 ネットバンキングが使えれば,集計などの作業も容易に行えるのですが,一般に成年後見人が就いている状態では,銀行はネットバンキングの利用を認めてくれません。
 紙の通帳に記載された取引を集計してExcelに移し替える作業を行ったりするのですが,もう少しこのような事務処理の負担を軽減することはできないものかと常々思っていました。

 そこで,開発したのが,通帳にOCR処理を施して,データとして扱える状態にするというシステムです。
 LegalWinという事件管理を行うシステムの一機能として開発しています(機能の詳細は機能紹介ページを参照)。
 今やOCRといえば,「AI OCR」という言葉も聞かれるくらいで,一昔前よりも格段に精度が上がっています。
 上記のOCR機能も,ディープラーニング技術を用いたもので,特に日付や金額といった数字の認識については,かなりの精度となっています。
 
 通帳のOCRで困難なのは,各銀行の通帳ごとに体裁が微妙に異なるということなのですが,その点については,各銀行ごとに処理を変えることで対応しています。

 このような通帳のOCR技術は,ネットバンキングが広くできるようになるまでの過渡的な技術ではあります。
 もっともLegalWinでは,成年後見事件における取引の分類を学習して,一度設定した取引の分類が半自動的に入力されるようになっているので,OCRの必要の有無に関わらず,使っていくほどに入力作業が楽になっていきます。