レコーディングダイエットで知られる岡田斗司夫の本。
新聞紙上で行っていた人生相談のやりとりと,
その回答を書き上げるまでに著者がどんなことを考え,
工夫したのかというプロセスの部分が主な内容です。
タイトルでかなり損をしているような気がしますが,
面白かったです。
法律相談と人生相談はもちろん同じものではありませんが,
共通する部分も多分にあるでしょうし,参考になりました。
「共感」について触れている部分をご紹介。
「共感のコツは『相談者と同じ温度の風呂に入る』ことにあります。
恋愛で悩んでいるとか、借金のことで困っているとか、
いろんな悩みがありますよね。
その時に、
ついつい僕たちはその相談者と同じ温度の風呂に入らないんです。
その人が熱くて困ってるとか、冷たくて困ってると言っても、
自分は服着て標準の温度で快適に過ごしながら、
つまり安全地帯から『こういうふうにすればいいよ』と
忠告してしまう。
とくに男性はこれをやってしまいがちです。
というのも、男性はすぐに回答を出そうとする。
僕と同じで、役に立とうとするあまり、
その人に対していま自分が言える一番論理的で、行動可能で、
こういうふうにすれば状況が改善されるのにといった指針を、
手早く言おうとしすぎるんです。
結論だけじゃダメなんです。
それよりもっと前の段階で、
『相手と同じ温度の風呂に入る』。
これが必要です。」
こういうの,相談における基本といえば基本なんでしょうけど,改めて気を付けないとと思いました。
寄せられる人生相談への,
著者の回答のあり方の変化が書かれているのも興味深かったです。
当初は著者は,人生相談で持ち込まれる悩みに対して,
コンピュータのように論理的に理性的に分析して,
余計な部分を仕分けして,解決可能な問題についての解決策を
提案するというような方向性でした。
しかし著者はある時,
自らの回答に対して違和感を持って考え込みます。
「俺の回答には愛がねえな」
著者は,痛快さや過激な切り口を売りにするのではなく,
あくまで「役に立つ回答」を目指しています。
ところが,回答の際に「上から目線」だけだと,
結局相手に言葉が届かず,役に立たないと感じ始めます。
では,どうするか。
論理的に考えをひねり出す限り,
上から目線になる事自体は絶対的な宿命として避けようがない。
そこで,緩和剤としての「愛」が必要なんだという結論に
たどり着きます。
「もう一歩、もう半歩だけ、相手の事情に踏み込む勇気。
もう少しだけ、傷つかない言葉を選ぶ配慮。」
「そのほんの少しのさじ加減が『頭の良いだけの回答』と
違うスパイスになる。」