2012年1月2日月曜日

最速の日本語入力方式を求めて

新年明けましておめでとうございます。

相変わらずマニアックなことについて書くことになりそうですが,
新年ということですのでお許しいただきたいと思います。

今回は「パソコンにおける日本語入力方式」について
書いてみることにしました。


日本語入力の効率は仕事の効率を左右する


弁護士もご多分にもれず,パソコンを使って文章を
作成するということを日常的に行います。
そして日本語を入力している時間は業務時間の中でも
結構な時間を占めています。
したがって,この入力効率の如何は仕事そのものの効率を
左右しかねません。

そこで,何とか効率よく入力することはできないかといろいろと
試行錯誤をしてきました。


様々な日本語入力方式とその効用


試行したことの中にはタッチタイピングの技術の向上を図るとか,
なるべくホームポジションから手を動かさなくてもいいように
キーカスタマイズをするとかもあるのですが,
それ以上に影響が大きいものとして,
どのような「日本語入力方式」をとるかというものがあります。

ここでいう「日本語入力方式」とは,ローマ字入力とか,
かな入力とかというものです。
(キーボードで「r」,「a」と刻印されているキーを順に押すと,
「ら」と入力されるのがローマ字入力。
一方キーボードに刻印されているひらがながそのまま入力される
というのがかな入力。)

これについては,大多数の方はローマ字入力を使っていると
思います。
(2009年のある調査では,
「ローマ字入力」を使用している人は87.7%,
「かな入力」は12.0%という結果だったらしいです。)

実際に私も昨年前半まではローマ字入力を使っておりました。
しかし,現在はローマ字入力でもかな入力でもない方式
日本語入力を行っております。

これは,改めて検討してみたところ,
日本語入力方式としてローマ字入力が
最適なものとは思えなかったからです。
(ここでいう「入力効率」とは,主に一文字入力するのに
キーボード上のキーを何回打鍵しなければならないか
ということを念頭に置いています。)

たとえば,ローマ字入力で
あるひらがなを入力しようすれば,
「あいうえお」の母音を除けば
2回以上キーを押さなければなりません。

一方でたとえばかな入力の場合は,
「ら」と入力する場合には,
キーボードの「ら」と書いてあるキーを
一回押しさえすれば入力できるのです。

このようなことから,同じ量の文章を入力する場合でも,
入力方式によってキーを押す回数に違いが出てきます。

もっとも,
かな入力では確かにキーを押す回数は少なくすることができるものの,
その分押さなければならないキーが広範囲に
わたってしまうという問題があります。

具体的には,ローマ字入力の場合,
4段あるキーボードのキーのうち
下3段を使用するだけなのに対して,
かな入力では4段をフルに使用することになります。
(キーボードを見ていただくと,
ひらがなの刻印は最上段の数字のキーにも
されていることが分かります。)

このように使用するキーが多いと,
覚えづらいというイニシャルコストの問題もあるのですが,
指の移動範囲が広く入力しづらいというランニングコストの問題もあります。


親指シフト,中指シフト


打鍵回数は極力少なくしたい。
しかし指の移動範囲は狭くしたい。

この2つの相反する要請を両立する入力方式としては,
特定のキーを入力文字の切り替えのための
「シフトキー」として用いる方式があります。
たとえば,普通に「A」というキーを押すと「あ」と入力されるが,
「K」というキーを押しながら「A」というキーを押すと
「う」と入力されるようにする,という方式です。
この場合,「K」というキーが入力される文字を
切り替える(「シフト」させる)ためのキー,
すなわち「シフトキー」として機能していることになります。
(したがって,ここでの「シフトキー」というのは,
キーボード上の「SHIFT」キーとは違います。)

このようにシフトキーを使った入力方式のうち比較的メジャーなのは,
親指シフト(NICOLA)という方式です。
親指の位置に特殊なキーを配置した専用のキーボードを用いて,
その親指シフトキーと他のキーと同時に打鍵することで
入力する文字の入れ替えを実現するという入力方式です。
勝間和代という方もこの方式を使っていると本に書いています。

この方式の問題点は専用のキーボードを使わないと
その真の実力を発揮できないということです。
スペースキーの左右両隣のキーをシフトキーとして
使用できるようにするソフトを
インストールすることで一応通常のキーボードでも親指シフトの環境を
実現することは可能なのですが,完全とは言えません。
自分もしばらく試してみたのですが,
キーボードが変わるごとに微妙にシフトキーの位置が変わって,
使用感が安定しないのが自分はダメでした。
また専用のキーボードでないからか,
手首を内側にひねるような動きになるようなことが多くて
手の筋が疲れるのもあまり好きではありませんでした。

そこで,キーボードを選ばない
「中指シフト」という方式を選択することにしました。
中指シフトの中でも「月配列」とかいろいろあるのですが,
最終的に落ち着いたのは,「下駄配列」というものです。

これにより,一文字一打鍵で,指の移動も必要以上に大きくなく,
かつ,どのキーボードを使っても使用感に大きな変化のない
環境を実現することができました。


下駄配列の実際


具体的にどうやって下駄配列を始めるかですが,
Macの場合は「KeyRemap4Macbook」という
フリーソフトを入れるだけです。
このソフトは,あるキーを押したときにそれが
どのような機能を果たすかということを
入れ替えたりすることができるようにするソフトで,
その中のひとつの設定として
下駄配列も入っているのです。

このソフトで下駄配列の環境を導入すると,
キーの表面に刻印されている文字は全く意味をなさなくなります。
したがって,最初はキー配列の表をどこかに置いておいて,
どのキーを押したらどの文字が入力されるのかを
体で覚えていくことになります。

このキーの位置を覚える事自体はそれほど困難なことではなく,
3日もあれば位置はだいたい覚えることができてしまいます。
あとはいかにスムースに入力ができるようになるか
ということなのですが,
これは自分の場合結構時間がかかったような気がします。
具体的にはローマ字入力と同程度の入力速度になるまで,
1ヶ月弱くらいかかったような気がします。

ちなみに今でもローマ字入力については
使おうと思えばさほどの問題なく使うことができますので,
必要なときがあれば,ローマ字入力に戻すということも可能です。

両方の入力方式を使ってみての感想としては,
下駄配列の場合,ローマ字入力とは違って
文字を入力する際に一度日本語をローマ字の綴りに
変換する必要もないことから,
文章を書いている際の頭の負担が減っているような気が
しないでもありません。
(こういう使用感は親指シフトについてよく言われることです。)
定量化できないので明確には言いがたいですけれども。

また,下駄配列の方が入力効率がいいですから,
ローマ字入力のときのように指がバタバタとキーボード上を
忙しく動きまわるということがありません。
他人からみると指が高速で動いている方が
速く入力できているように見えるでしょうから,
なんというかパッと見の「エキスパート感」は
出しにくいのですが,
そのあたりは実利をとるということでいかがでしょうか。

今まで使っていた入力方式以外のものを身につけるというのは,
上で述べたようにたしかにそれなりの時間を要するものです。
それでも一度身につけさえすればその後ずっと
効率よく入力をすることができるのですから,
やるだけの価値はあるのではないでしょうか。


なお,最近iPhoneの「Siri」なり,
「ドラゴンディクテーション」なりの
音声認識による文字入力の精度は相当に
高くなってきています。
将来的に音声認識技術の進歩によって,
キーボードによる文字入力の技術の
必要性が低下したとしても,くれぐれも当方に苦情を
お寄せにならないでいただきたいと思います。
その場合,技術の習得に要した時間の大きさについて
   一緒になって愚痴を言い合う
程度のことしか致しかねますので予めご了承ください。